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チャイナ・レポート(Web版)

“微刺激”政策は、機能しているのか?(2014年11月1日号掲載)

日中産学官交流機構特別研究員 田中 修

 9月17日、李克強総理は国務院常務会議で再び「小型・零細企業対策」を打ち出したが、これも景気“微刺激”政策(※センターニュース7月1日号参照)の一環と考えられる。今回追加された対策の主なものは以下のとおりである。

①規制緩和
 不必要な証明書と資質・資格審査の整理を加速し、小型・零細企業のために障害を取り除く。
②税制支援
 販売月額が2万元を超えない小型・零細企業、個人工商事業者及びその他個人に対し、増値税(※中国の付加価値税。物品の売買、加工、修理役務に課税。税率は品目によって異なる)・営業税(※特定の役務の提供、無形資産の譲渡、不動産の販売時に売上等に課税。税率は役務によって異なる)を暫時免除するという現行の制度について、本年10月1日から2015年末まで、販売月額が2―3万元の者も対象に加える。
③金融支援
 大銀行が小型・零細企業にサービスする専業機関を設立することを奨励する。民間資本が法に基づく中小銀行等の金融機関の発起・設立を推進する。
④財政支援
 就業困難者を雇用する小型・零細企業に対して、社会保険料負担分の補助金を交付する。
⑤小型・零細企業の起業支援
 地方の中小企業支援資金が、小型・零細企業を支援範囲に組み入れることを奨励する。
⑥情報サービスの強化
 企業の政策情報獲得に便宜を図り、ビッグデータ・クラウドコンピューティング等の技術を運用し、更に有効にサービスを行う。

 しかし、『経済参考報』2014年9月29日記事は、この政策が末端でしっかり実施されていないのではないかと疑念を示している。具体的には以下の点である。

①販売月額2万元を増値税・営業税の課税最低限とする措置は、うまく実行されていない。たとえば、ある企業が今月の収入が1・8万元で、来月が3万元だとすれば、本来今月は免税でなければならないが、実際は数ヵ月を合計し、月平均収入が2万元以上であれば、減税対象月でも課税している。
②銀監会は、小企業への貸出の伸びが全貸出の伸びを下回ってはならず、増額が前年を下回ってはならないと要求している。しかし、ある銀行は今年の増額を100億元とし、来年を101億元とするようなやり方で銀監会の要求をクリアーしている。
③小型・零細企業の認定にも、ごまかしがある。たとえば、高速道路プロジェクトの会社の社員は一般に20人を超えず、高速道路完成前の営業収入は数百万元にすぎない。このようなプロジェクト会社も、小企業向け貸出しの対象となっている。
④銀行貸出を申請しようとすると、会社の格付けがAランクであっても、手続が非常に繁雑で、長い時間を要し、コストパフォーマンスが低い。このため、会社は結局貸出申請を放棄せざるを得ず、現在は皆自己資金に頼っている。
⑤貸出の際、銀監会は中小企業に財務諸表の提供を要求するが、会計手数料が企業の負担となり、担保評価にも手数料が必要である。中小企業の資金コストのうち、銀行融資コスト以外の手数料が60%を占めている。

 このように、小型・零細企業対策は、実施プロセスで問題が多い。そこで『経済参考報』は、次のような改善案を提案している。

①小型・零細企業が納める必要のある税・手数料を概算し、販売収入の5%あるいは6%の固定比率で税務機関が統一的に徴収することで、コスト負担を軽減する。
②税を減免した部分についても、税収と同様に現地の地方政府の成績考課の指標に組み入れ、地方が優遇策を推進するインセンティブを高める。
③金融機関の貸出への預貸比率規制について、小型・零細企業には例外を設ける。
④多くの小型・零細企業の関係者は政府のウェブサイトを見ておらず、優遇策の内容を知らない。統一した情報プラットホームを設立して企業の問い合わせに対応させ、企業の関係者が簡便・迅速に最新の優遇政策を理解できるようにする。

 景気“微刺激”策は、末端においてしっかり実施されてこそ効果がある。今後は、これを担保する仕組みを構築することが必要である。

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