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チャイナ・レポート(Web版)

「新たな常態」とは ―中央経済工作会議、気づきの点(2015年1月1日号掲載)

日中産学官交流機構 特別研究員 田中 修

 2014年12月9−11日、2015年の経済政策の基本方針を決める中央経済工作会議が開催された。本稿では、取りあえずの気づきの点をいくつか紹介したい。

(1)経済の「新たな常態」を公式文件で正式に解説
 今回の会議の大きな特徴は、「新たな常態」について、詳細な説明がなされたことである。「新たな常態」は、習近平総書記が昨年5月に河南省を視察した際に初めて用いた表現であり、その後7月29日に開催された党外人士座談会で、習総書記は再度「新たな常態に適応しなければならない」と言及した。
 さらに11月9日、APEC首脳会議の講演において、習は国家主席として「新たな常態」の特徴を具体的に解説し、12月5日に開催された党中央政治局会議は、「中国の経済発展は新たな常態に入った」とし、「経済発展の新たな常態に主体的に適応しなければならない」とした。これにより、「新たな常態」は、党公認の表現となったのである。
 今回の中央経済工作会議では、この「新たな常態」を“9つ”の観点から分析している。

①消費:模倣型・横並び式の消費から、個性化・多様化に主流が移っている。
②投資:伝統産業が相対的に飽和状態になり、インフラの相互連結・新技術・新製品・新業態・ニュービジネスモデルへの投資機会が大量に増えている。
③輸出・国際収支:わが国の低コストという比較優位性に変化が発生しており、新たな比較優位性を早急に育成しなければならない。
④生産能力・産業組織:伝統業が大幅な供給超過となっており、新興産業、サービス業、小型・零細企業の役割が更に際立ってきている。
⑤生産要素の優位性:人口高齢化・農業余剰労働力の減少により、労働力の低コストの優位性は減殺され、経済成長が人的資本の向上・技術進歩により多く依存するようになっている。
⑥市場競争:これまでの数量拡大・価格による競争から、質・差別化による競争に転換している。
⑦資源・環境の制約:環境の受容能力が、既に上限に到達或いは接近している。
⑧経済リスク:経済成長の下降に伴い、各種の隠れたリスクが徐々に顕在化している。
⑨資源配分、マクロ・コントロール:
 経済の刺激政策の効果が薄れ、市場メカニズムにより将来の産業発展方向を模索するとともに、マクロ・コントロールも総需給関係の新たな変化に科学的に対応しなければならなくなっている。

(2)2015年の経済政策の“5つ”の柱
 会議では、「経済発展の新たな常態に主動的に適応」しなければならないとして、次の5つの政策重点項目を挙げている。

①経済の安定成長の維持に努める
 積極的財政政策を力強さのあるものにし、金融政策は引締め・緩和の適切な度合いを更に重視する。
②新たな成長スポットを積極的に発見・育成する
 大衆による起業、市場主体のイノベーションに資するような政策・制度の環境を整える。
③農業の発展方式の転換を加速する
 農業の安定的発展の基礎を固め、農村を引き続き改善し、農民の所得を引き続き増やす。
④経済発展の空間構造を最適化する
 「シルクロード経済ベルト・海のシルクロード」、北京・天津・河北の協同発展、長江経済ベルトの3大戦略を重点的に実施する。
⑤民生を保障・改善する政策を強化する
 雇用対策と貧困扶助対策に特に力を入れる。

(3)経済改革
 行政審査・許認可、投資、価格、独占業種、特許経営、政府のサービス購入、資本市場、民営銀行の参入、対外投資等の分野の改革を加速するとしている。

(4)経済成長目標
 具体的な成長率目標は明記されていないが、「勢いを減じることなく速度を調整し、量の増加と質の一層の最適化に努める」とともに、「経済社会発展の主要予期目標を合理的に確定しなければならない」とする。10−12月の成長率はまだ明らかではないが、これよりも経済を減速させない形で、3月の全人代において目標を定めるということであろう。

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