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チャイナ・レポート(Web版)

AIIB参加の是非は(2015年7月1日号掲載)

日中産学官交流機構 特別研究員 田中 修

 中国の習近平国家主席が2013年10月に提唱して創設準備が始まったアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、本年末までの創設に向けて、関係各国の調整が進んでいる。
 当初、参加は少ないとみられていた創設メンバー国は、今年3月に英国をはじめ欧州諸国が雪崩を打って参加を表明したことにより、5月22日現在で57か国に達した。3月には、日本でも「バスに乗り遅れるな」論が高まったが、6月に入り、議論はしだいに沈静化しているようにみえる。以下、AIIBについて私見を述べたい。
 そもそも中国がこの構想を打ち出したのは、4つの理由があったと思われる。
 第1に、中国が世界第2位の経済大国に躍進したにもかかわらず、国際金融機関で相応の地位を認められなかったことがあろう。IMF(国際通貨基金)では、シェアの見直しが合意されたにもかかわらず、中国の発言権拡大をきらう米国議会の反対で実現していない。ならば、自前の機関を作ろうということである。
 第2に、中国では、2009〜10年の無茶な設備投資により、鉄鋼・セメント・アルミ・板ガラスなど多くの産業が生産能力過剰となり、身動きがとれなくなっている。現在、不動産開発投資は低迷しており、国内では解消手段がない。ならば、アジアのインフラ投資に参加することにより、構造調整圧力を弱めようというわけである。
 第3に、アジアで膨大なインフラ投資需要があるにもかかわらず、既存のアジア開発銀行(ADB)が十分に対応しきれていない。特に、審査期間の長さ、職員の官僚的対応がアジア各国の不満をまねいている。
 第4に、中国は外貨準備の運用を独自に行ってきたが、直後に世界経済危機が発生したこともあり、必ずしも成功していない。ならば、国際金融機関を介して運用した方が安全という計算があろう。
 では、日本はどうすべきなのだろうか。日本は欧州とは異なり、次の点を考えておく必要があると思う。
 第1に、日本は長く、アジアにおいて金融のリーダーであり、アジア地域の経済発展に大きな責任を担っている。だとすれば、ADBとAIIBを含め、アジアの金融秩序はどうあるべきか、という大きな構想をまず打ち立てるべきであろう。
 第2に、ADBに問題があったとすれば、米国とともにADBの改革を進めるべきであろう。将来は増資も必要であるし、そのときは中国のシェアを高めてもよいと思う。ADBがAIIBに出資して、ADBグループを形成することもありえよう。
 第3に、日本企業は、国際競争力の面で劣っている。2013年のADB融資における各国企業のプロジェクト受注シェアをみると、中国が20・8%であるのに対し、日本はわずか0・5%にすぎない。公正な国際入札でさえシェアをとれないのに、中国国有企業救済の側面をもつAIIBのプロジェクトで、日本企業が0・5%以上のシェアをとるのは至難のわざであろう。だとすれば、AIIBとは関係なく、いかに日本企業にアジアのインフラ投資を受注させるか、新たなスキームを考えるべきであろう。
 この点、4月以降、大きな流れはこの方向にあると思われる。ADBはすでに、自己改革の意思を表明し、資金力の増強や審査の見直しに動き出した。安倍総理は、アジアのインフラ需要にこたえるべく、ODA等の経済協力手段を総動員し、機能を強化したADBと連携して、今後5年間に1100億ドルの質の高い投資を行うことを表明している。また、政府レベルでは、2013年から、日本企業によるインフラ投資の海外展開をどうサポートしていくか、経協インフラ戦略会議で具体的な議論が進んでいる。
 こうしてみると、バタバタとあわててAIIBへの参加を議論する必要はなく、まずはこれがガバナンス面で適正に運営されるか、被援助国の環境破壊・政権の腐敗・債務増大を助長するものにならないかを、しっかり見きわめたうえで、参加の是非を議論すればよいと思う。

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