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チャイナ・レポート(Web版)

夏季ダボス会議における李克強総理の発言(2018年11月1日号掲載)

奈良県立大学特任教授 特別研究員 田中 修

 李克強総理は9月19日、天津で開催された夏季ダボス会議で開幕挨拶を行った。この会議は、上半期の経済情勢を踏まえ、特に米中貿易摩擦が激化するなかで、今後の経済政策をどう運営するかについて、李克強総理が内外に基本方針を披露する貴重な機会である。以下、挨拶のポイントを紹介する。
 まず、経済の現状については、成長率が連続12四半期、6・7%~6・9%の中高速区間で安定しており、雇用情勢も良好であることから、「総体としてみれば、中国経済は引き続き安定の中で好い方向に向かう発展態勢を維持している」とする。
 しかしながら、外需については、米中貿易摩擦の深刻化を踏まえ、「世界経済貿易の環境は顕著な変化が発生しており、世界に深く融け入った中国経済に影響をもたらすことは避けられない」とし、内需についても、「最近、国内投資・消費の伸びはある程度鈍化している」として、経済の平穏な運営が難しくなってきていることを認めている。ただ、「歴史上、我々は何度も極めて峻厳な試練に直面してきたが、それに持ち堪えただけでなく、以前よりも更によく発展してきた」とし、「当面の困難と試練に対応する底力・能力・方法を、我々は有している。中国経済の列車は、ダウン・失速することはなく、必ず安定的に遠くへと進んでいく」と、今後の経済運営についての自信を示している。
 マクロ経済政策については、「中国は、『バラマキ』式の強い刺激を過去に行ったことはないし、現在も行うつもりはない」とし、政策の基本的方向を変えず、事前調整・微調整を重視し、経済を合理的区間に維持するとしている。なかでも、「中国のような人口大国にとっては、雇用の安定が一番の大事であり、引き続き雇用を確実に保障しなければならない」とし、十分な雇用を確保することを、政策の最重点に置くとしている。
 財政政策については、「積極的財政政策をより積極的にし、内需拡大と構造調整においてより大きな役割を発揮させ、引き続き減税と費用の引下げを推進する」とし、安易な公共投資拡大を否定する。金融政策についても、「穏健な金融政策は緩和・引締めを適度にし、マクロレバレッジ率を安定させ、流動性の合理的充足を維持し、中小・零細企業の資金調達難・資金調達コスト高の問題解決に力を入れる」とし、全般的な緩和ではなく、中小・零細企業の資金調達の円滑化を重視している。
 また、「最近、人民元レートの動向に一定幅の変動が出現し、中国が意図的に行ったと考える人がいるが、これは事実に合致していない。なぜなら、人民元レートが切下げに向かうことは、中国にとって弊害が多く、利益が少ないからである」とし、米国の高関税政策に為替レート引下げで対抗しないことを明らかにした。
今後の経済政策については、次の3つに力を入れるとする。

⑴ 改革開放の推進
 市場参入を一層緩和し、各種所有制企業、国内・外資企業のために、扱いが同等で競争が公平な市場環境を作り上げる。民営経済を支援し、民営企業の投資を阻害する隠れた障碍を除去する。各種財産権を厳格に保護し、企業家の起業・イノベーションを奨励する。
 一層開放を拡大し、国際的に通用する経済・貿易ルールとのリンクを強化し、国際的に一流のビジネス環境を作り上げる。

⑵ 構造調整
 伝統的製造業をグレードアップさせ、新興産業・サービス業の発展を支援する。落後した生産能力を淘汰し、中国製品・サービスの品質革命を実現する。個人の多様なルートによる増収を促進し、消費能力を持続的に増進する。新しい個人所得税法を速やかに実施し、個人の税負担とりわけ中低所得層の税負担を顕著に軽減する。インフラと民生分野の脆弱部分への有効な投資を拡大する。

⑶ イノベーション
 基礎研究と応用研究を支援し、企業が研究開発に投入することを奨励し、イノベーションの成果の実用化を加速する。クラウドイノベーションスペース・インキュベーター・イノベーションプラットホームの市場化・専業化レベルを高める。
 知的財産権を保護する法体系の執行力を強化し、より厳格でより威嚇的な権利侵害への懲罰的賠償制度を実施し、各方面のイノベーションのためにより確かな保護を提供する。

 

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