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チャイナ・レポート(Web版)

中国共産党19期四中全会決定について(2020年1月1日号掲載)

ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員 田中 修

 10月28〜31日、党19期4中全会が開催され、「中国の特色ある社会主義制度を堅持・整備し、国家ガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化を推進することの若干の重大問題に関する党中央決定」(以下「決定」)が採択された。
 この決定は、基本的に政治色の強いものであるが、経済に関してもかなりの言及があるので、本稿では、特に経済政策へのインプリケーションは次の点である。

1 なぜ「ガバナンス」か?
 ガバナンスが今回強調されたのは、現在経済に下振れ圧力が増大し、米中経済交渉になかなか進展が見られない状況下で、党内を引き締め、党の団結を強化する必要があったからであろう。
 だが、この時期にガバナンスが議論された背景として、2019年が建国70周年であったことも見逃してはならない。ロシア革命においてボルシェビキが政権を獲得したのが1917年、ソ連が崩壊したのは1991年、政権担当期間は74年である。すでに中国共産党の政権担当期間は、ソ連共産党の担当期間に接近しており、いかにガバナンスを強化し、建国75周年を迎えるかは、党指導層の最大関心事と考えられる。

2 改革の新たな措置は盛り込まれず
 新たな改革措置がこの4中全会で打ち出されなかったのは、習近平総書記の4中全会への「説明」によると、党18期3中全会で提起された336項目の重大改革措置が、「なお未完成のものがあり、甚だしきは相当長期の時間をかけて実施を必要とするものもある」現状では、新規の措置を打ち出すことは困難であったということであろう。
 ただ、重要なことは、ここで党18期3中全会での改革の方針が再確認されたことである。たとえば、「資源配分における市場の決定的役割を発揮させる」という表現が再度盛り込まれた。また、国有企業改革において、国有企業を強大化するのではなく、国有資本を強く、優れた、大きいものにするとし、管理する対象は国有企業ではなく国有資本であることが再確認されている。中国の改革は一進一退であるので、内容の再確認も重要である。

3 所得再分配を強調
 「決定」では、税制・社会保障・移転支出による所得再分配、税制による所得の調節強化、税制における直接税比率の引上げとともに、「合法所得を保護し、低所得者の所得を増やし、中等所得層を拡大し、高すぎる所得を調節し、隠れた所得を整理・規範化し、違法所得を取り締まる」と、所得再分配を強調している。
 習近平総書記は19回党大会において、2035年までに所得格差を顕著に縮小し、21世紀中葉までに「共同富裕」を実現するとしている。これを実現するには、所得再分配政策をこれから本格化することが不可欠となる。

4 「小康社会の全面実現」の意味
 「決定」では、全国民をカバーする社会保障システムの整備と脱貧困が重視されている。2020年までに「小康社会を全面的に実現」するというのは、党の大目標であるが、以前は2020年のGDPを2010年の倍にすることとされていた。これを実現するには、2019年と20年の成長率を6・2%以上に保つ必要があるが、最近の経済下振れ圧力の増大により、これを確保することは容易ではなくなっている。
 習近平総書記は、2017年の19回党大会において、「経済成長を高速成長から『質の高い発展』に転換する」こととして、これまでの成長率至上主義を放棄すると同時に、農村の脱貧困を2020年までの最重要政策と位置づけた。この段階で、「小康社会の全面実現」の意味は、GDPの倍増から農村の脱貧困に実質的に転換されたといってもよい。ただ、これだけでは対象は5500万人にとどまるため、全国民をカバーする社会保障システムの整備が追加されたのであろう。


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