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チャイナ・レポート(Web版)

2021年のマクロ政策(2021年3月1日号掲載)

ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員 田 中 修

 2020年12月16〜18日、21年の経済政策の基本方針を決める中央経済工作会議(以下「会議」)が、党中央・国務院共催で開催された。
 会議は、「2021年は、わが国現代化建設プロセスにおいて特殊な重要性をもつ一年である」とし、経済政策の基本方針は、「疫病防御と経済社会発展の成果を強固にして拡大し、発展と安全を更に好く統一し、『6つの安定』(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策を着実にしっかり行い、『6つの保障』(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)任務を全面実施しなければならない」としている。
 マクロ政策については、経済運営を合理的区間に維持するよう努力し、内需拡大戦略を堅持し、連続性・安定性・持続可能性を維持しなければならないとする。具体的には、「積極的財政政策と穏健な金融政策を引き続き実施し、経済回復に必要な支援の程度を維持し、政策のオペレーションを更に精確・有効にして、急に方向転換せず、政策のタイミング・程度・効果をしっかり把握しなければならない」とされた。
 マクロ政策の「連続性・安定性」に加え「持続可能性」が入っており、「急に方向転換はしない」としつつも、財政の持続可能性やマクロレバレッジ率にも注意を払う、両構えの姿勢がみられる。
 積極的財政政策は「質・効率を高め、更に持続可能にし、適度な支出の強度を維持」するとともに、所得分配の調節で主動的に成果を出し、地方政府の隠れ債務リスクを解消しなければならないとする。
 2020年5月の「政府活動報告」では「更に積極的に成果を出さなければならない」とされていたが、19年会議の「質・効率の向上」に回帰している。さらに、財政の「持続可能性」が重視され、支出の強度も「適度」とされている。
 2020年の財政赤字の対GDP比は、19年の2・8%から3・6%に一気に高まったが、これを更に高めることに財政部が強く抵抗しているのであろう。財政赤字の対GDP比率を若干引き下げることも考えられる。
 また、地方政府の隠れ債務リスクの解消が明記されており、実際の地方政府債務が公表の数字より大きいことが分かる。
 さらに、所得分配の調節が明記されていることは興味深い。「共同富裕」政策の第一歩が2021年から始まるということであろう。
 穏健な金融政策は「柔軟・精確、合理的・適度にし、マネーサプライと社会資金調達規模の伸びを名目成長率と基本的に釣り合わせ、マクロレバレッジ率の基本的安定を維持し、経済回復とリスク防止の関係をしっかり処理」するとともに、科学技術イノベーション、小型・零細企業、グリーン発展への金融支援を増やさなければならないとする。
 2020年5月の「政府活動報告」では、「更に柔軟・適度にしなければならない」とされていたが、19年会議のトーンに戻り、さらに「精確・合理的」が加わった。
 金融支援の対象として、小型・零細企業に加え、科学技術イノベーションとグリーン発展が加わった。ここに貸出資金を重点配分することが「精確」の意味であろう。
 また、「政府活動報告」では、「M2(広義の貨幣のこと。流通中の貨幣に、普通・当座預金、定期預金等を合計したもの)と社会資金調達規模の伸びが、顕著に昨年より高くなるよう誘導する」としていたが、こちらも19年会議のトーンに戻っている。M2と社会資金調達規模の伸びを名目成長率に合わせ、流動性の合理的な充足を図ることが「合理的」の意味であろう。
 さらに、マクロレバレッジ率の基本的安定、経済回復とリスク防止の関係にも言及しており、リスクを増大させるおそれがある一段の金融緩和に、人民銀行が抵抗していることがうかがえる。


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