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チャイナ・レポート(Web版)

2022年の経済政策(2022年3月1日号掲載)

ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員 田 中 修

 2021年12月8〜10日、中央経済工作会議(以下「会議」)が開催され、2022年の経済政策の基本方針が決定された。

 会議は、中国経済が、洪水・冠水や新型コロナ感染症の再拡大により需要が収縮し、原材料価格高騰・電力不足が供給にダメージを与え、経済成長率の減速・不動産市場の動揺により将来予測が弱気化しているという、三重苦に直面していることを率直に認めている。

 2022年の経済政策の基本方針については、「マクロ経済の大きな基盤の安定に力を入れ、経済運営を合理的区間に維持し、社会の大局の安定を維持し、第20回党大会の勝利の開催を迎えなければならない」とする。

 中国では、党大会のような大きな政治イベントのある年は「安定」が最優先される。このため、2022年の経済政策は『穏』(安定・穏健)を第一とすることとされた。「穏」が今回の会議のキーワードである。

 マクロ政策は、「穏健・有効でなければならない」とされた。

 積極的財政政策は、前回は「質・効率を高め、更に持続可能にする」とされていたが、今回は「効果を高め、精確・持続可能性を更に重視」と、財政規律をより重視するトーンとなっている。具体的政策としては、支出の拡大よりも、支出進度の加速、減税・費用引下げ、インフラ投資の前倒しが重視されている。また、財政リスクを意識し、地方政府の隠れ債務の新たな増加に断固歯止めをかけるとしている。

 穏健な金融政策は、前回は「柔軟・精確、合理的・適度」であったが、今回は「柔軟・適度」に簡素化された。

 また、「財政政策と金融政策は協調・連動しなければならず、クロスシクリカル(周期を跨ぐ)・カウンターシクリカル(逆周期)なマクロ・コントロール政策を有機的に結びつけなければならない」と指摘する。マクロ・コントロールについては、最近「クロスシクリカルな調節」が強調される傾向にあったが、今回は「カウンターシクリカル」も併記された。潜在成長率の長期的趨勢を見極めながら、経済を適切にコントロールするとともに、短期的な下振れ圧力に対応することが求められているのである。

 ミクロ政策は、「市場主体の活力を奮い立たせなければならない」とする。市場主体とは、主として中小・零細企業、個人事業者であるが、これを活性化することは雇用の確保にもつながることになる。

 構造政策は、「国民経済循環の円滑化に力を入れなければならない」とする。具体的には、供給の制約・目詰まりを打破し、生産・分配・流通・消費の各段階を貫通させることに重点が置かれている。

 住宅政策については、これまでは「住宅価格・地価・予想の安定」が重視されてきたが、恒大グループ等の経営危機による不動産市場の動揺を反映して、住宅価格の急落を防ぐため、「予想の誘導強化」が強調されている。また前回は、「不動産市場の平穏で健全な発展」が重視されたが、今回は不動産業の良性の循環と健全な発展に重点が置かれている。

 科学技術政策は、科学技術体制改革3年アクションプランを実施し、基礎研究10年計画を制定・実施するとしている。

 改革開放政策は、「発展動力を奮い立たせなければならない」とする。

 改革については、(生産)要素市場化配分総合改革テストにしっかり取り組み、国有企業改革3年行動任務を達成し、電力網・鉄道等の自然独占業種の改革を着実に推進しなければならないとした。

 開放政策については、「ハイレベルの対外開放を拡大し、制度型開放を推進し、外資企業への国民待遇をしっかり実施し、更に多くの多国籍会社の投資を吸収し、重大外資プロジェクトの早急な実施を推進する」と、引き続き外資導入を促進する姿勢を示している。

 地域政策は、「発展のバランス性・協調性を増強しなければならない」とする。具体的には、地域重大戦略と地域協調発展戦略の実施、東部・中部・西部と東北地方の協調発展促進、農村振興の全面推進、新しいタイプの都市化建設の質向上が挙げられている。

 社会政策は、「民生の最低ラインをしっかり保障しなければならない」とする。雇用対策では、大学卒業生等の青年と、新型コロナ感染症を契機に拡大したフレキシブルな形態の勤労者が重点対象とされた。また、3人目の子供の出産が認められたが、これが出生人口減少に一定の歯止めをかけられるかが焦点となる。


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