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中国労働事情レポート(Web版)

中国の労働関係法の公布状況、賃金状況 ~技能実習制度関連~

在中華人民共和国日本国大使館 一等書記官 田口勲

1 はじめに

 日本政府観光局の発表によると、2014年の訪日外客数は前年比29.4%増の1,341万4千人、そのうち中国からの訪日外客数は前年比83.3%増の240万9千人と過去最高を記録しました。この240万9千人の中には、観光客の他にも、駐在員や留学生、更には皆様が活用されている「技能実習制度」による入国者も含まれます。
 今回は、技能実習制度に着目し、中国の労働関係法の公布状況、賃金状況を紹介します。なお、本稿に含まれる見解はすべて筆者の個人的な見解であり、所属組織の公式的見解を示すものではありません。

2 中国人技能実習生の人数

 皆様ご承知のとおり、技能実習制度は開発途上国等の人づくりに一層協力するため、技能移転の仕組みとして1993年に創設された制度です。当該制度を活用して2014年末時点で167,626人の技能実習生が日本で実習を行っています。国籍別に見ると、中国国籍の技能実習生は59.7%を占めていることから約10万人いることになります。日本学生支援機構の発表によると、2013年5月1日時点での外国人留学生は135,519人、そのうち中国人留学生は81,884人ですので、中国人留学生よりも多くの中国人技能実習生が日本に滞在していることになります。中国人技能実習生が持つ日本に対するイメージは大きな影響力があると言えます。

3 技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保

 技能実習生が日本に対する良いイメージを持つことができるかどうかに大きく影響を与える要因として、受入れ企業の労働関係法令の遵守状況があると考えています。技能実習生が実習を行う際には、労働関係法令が適用されるにもかかわらず、残念ながら、法定の危険・健康障害防止措置などの未実施、労使協定を超えた残業や割増賃金の不払いといった労働基準関係法令に違反したケースが依然として認められています。厚生労働省の発表によると、2013年に労働基準監督機関が監督指導を実施した2,318実習実施機関のうち1,844機関(79.6%)に違反が認められています。
 主な違反内容は、安全衛生関係(49.3%)、労働時間(29.9%)、割増賃金不払(20.0%)、労働条件の明示(14.3%)、賃金不払(11.7%)ですが、これらは労働者を守るために使用者が遵守しなければならない最低限のルールです。

4 中国における労働関係法の公布状況

 中国の労働関係法も日本と同様に各種のルールが定められています。中国における労働関係の基本的な法律は1994年に公布された労働法です。同法の中には、安全衛生関係(第6章)、労働時間(第36条)、割増賃金不払(第44条)、労働条件の明示(第19条)、賃金不払(第50条)に関する規定もあります。また、労働者の安全衛生関係を規定する法律として、職業病防治法(2001年公布)と安全生産法(2002年公布)もあり、その他にも婦女権益保障法(1992年公布)、労働組合法(1992年公布)、労働契約法(2007年公布)、就業促進法(2007年公布)、労働紛争調停仲裁法(2007年公布)、社会保険法(2010年公布)等があります。
 このように中国においては、労働関係法が立て続けに公布されており、今後も急ピッチで労働関係法の整備が進むと考えられます。

5 中国国内の賃金状況

 労働関係法の整備だけでなく賃金の上昇も目を見張るものがあります。2015年7月末時点の北京市の最低時給は18.7元(約374円)、最低月額賃金は1720元(約34,400円)ですが、北京市政府の発表によると2014年の都市部の月平均賃金は6,463元(約129,260円)です。また、2015年の北京市の賃金ガイドラインにより定められている賃上げ率の基準は10.5%と引き続き高水準です。
 国際研修協力機構によると、2013年度における技能実習生(1号)への月平均支給賃金は125,058円と北京市の都市部の月平均賃金とほぼ同額です。賃金だけを見れば、中国人にとっては現在の技能実習生の賃金は、もはや魅力的とは言いづらい状況にあります。

6 おわりに

 技能実習制度創設前の外国人研修制度も含め、1982年から2014年までの外国人研修生及び技能実習生の新規入国者数を集計したところ、総数は約177万人、うち中国国籍は約92万人でした。この中には中国に帰国後に、習得した技能及び日本語能力を活用して当地の日系企業で働く方々、中には中国政府及び関連機関で対日業務を行っている方々もいます。日中関係の促進という観点でも技能実習制度が果たしてきた役割が如何に大きいか分かります。
 このように、技能実習制度は当地の日本関係者にとっても欠かせない存在です。受入れ企業の皆様におかれては、引き続き技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保等、制度の適正な運営にご協力くださるようよろしくお願いします。

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