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日本語教育・再考(Web版)

技能実習生や働く外国人に対する日本語指導を考える〈その12〉
〜日本語学習支援者からのよくある質問4〜(2016年1月1日号掲載)

公益社団法人 国際日本語普及協会(AJALT)
地域日本語教育担当理事 関口 明子

皆様 こんにちは。「日本語学習支援者からのよくある質問」シリーズの第4回です。


<質問>
 技能実習生に日本語を教えている者ですが、実習生が使う日本語で、文法的には問題はないのですが、気になることがときどきあります。間違いではないのでそのままにしていますが、どうしたらいいでしょうか。
 具体的には、職場にいらした年配のお客様が実習生Aさんに「寒いねえ」と話しかけました。Aさんは「いいえ、寒くないです」と答えました。「そう」とお客さんは言ってその場を離れました。Aさんは北京から来ましたので、寒くなかったのです。また、あるとき実習生Bさんは、昼休みに上司に「昨日家族が写真を送ってきました、見たいですか」と聞き、上司が「別に」と言ってそのまま席を離れた様子を私は見ていました。何か違和感がありましたが、その違和感がどこからくるのかわかりません。よろしくお願いします。

<回答>

 技能実習生や働く外国人に実際に日本語を教えていらっしゃる方々にとって、上記のようなことはよく経験なさるかと思います。母語話者同士が暗黙に伝えあっているニュアンスだったり、文化的背景だったりするものです。それを知らないために、本人は丁寧に、間違いなく話したつもりでも、相手に失礼に響くということがあります。以下に具体的に説明しましょう。

1.実習生Aさんの例
 「いいえ、寒くないです」は文法的には正しいです。でもなぜ質問者が違和感を感じたのでしょうか。
 日本人は、挨拶の習慣として「寒いですね」と話しかけられたらまずは「そうですね」と相手の話しかけを受け入れるのが通常です。気候の挨拶は、人と人が会った時の最初のコミュニケーションですから。そしてその後に「私は北京から来ました。北京の冬はもっと寒いです」等と加えたらいいと思います。その後きっと会話は続くと思います。「そうなの。北京は寒いんだね」等です。どんなに日本語が上手な外国人でも、相手に与えるニュアンスに気づかないことが多いのは当然だと思います。この部分は母語話者として丁寧に伝えてあげることが大切です。ここでは寒いかどうかをはっきりさせるというより、挨拶のコミュニケーションとして相手をまず「そうですね」と受け入れることが大切です。

2.実習生Bさんの例
 「見たいですか」が問題だと思います。文法的には正しいのですが、相手には直接的な表現過ぎるので、親しい友人以外には失礼に響きます。この場合「先生、家族の写真です」と言って写真を提示したらいいですね。
 私にも同じ経験があって、「土曜日に餃子パーティをします。先生、いらっしゃりたいですか」と聞かれて、心の中で「別に行きたいわけじゃないけど」と思ったことがありました。Bさんは教師に対して、きちんと尊敬語を使用していたのですが。
 それで、「〜たいですか」は親しい友人以外は使わない方が安全だということを説明しました。日本人の文化として、相手の気持ちを直接聞くことを避ける習慣があります。これは親しい友人でしたら大丈夫ですが。「先生もどうぞいらしてください」の方が失礼にならないと。
 その実習生は「先生の気持ちを聞く前に、来てくださいは失礼だと思いました」と言ったのです。本当に「言葉は文化」とよく言われますが、まさにその言語の運用はその国の文化ですね。文法以上に大切な部分だと思います。日本人が外国語を使うときにも同じことが言えると思います。

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