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日本語教育・再考(Web版)

技能実習生や働く外国人に対する日本語指導を考える〈その14〉
〜シャドーイングを取り入れる方法〜(2016年9月1日号掲載)

公益社団法人 国際日本語普及協会(AJALT)
所属講師 津田 訓江

 新しい言語を学習するとき、最後まで残りがちな発音の問題を解決する方法として、ニュース138号でシャドーイングというトレーニング方法をご紹介しました。今回はその導入にあたって大切な点をみてまいりましょう。

シャドーイング効果のでる日本語レベル
 一般的には、全くの初級でなく、初中級(初級と中級の間)以上のレベルの学習者にもっとも効果が期待されると言われています。全くの初級の場合は、まずしっかりとモデル音声を聞かせ、丁寧にリピート指導を繰り返していくことが大切でしょう。

適切な教材の選択
① 学習者の興味を引き、学ぶ必要性を覚える素材を
  シャドーイングは、毎回新しい未知の文法・表現などの内容を次々と学んでいくというのではなく、既に知っている・容易に理解できる・けれどもうまく話せないものを繰り返し、継続的に練習していく学習方法です。繰り返し取り組む意義を感じさせる飽きのこない素材であることが大切です。

② できるだけ、学習者の日本語レベルより少し低めのものを
  効率よくシャドーイングに集中するためには、現在のレベルより少し低めの素材が理想的です。内容理解に時間がかかったり、負担を覚えたりすることを防げます。
  ただ、場合によっては、現在のレベルを上回る表現を短期間でともかく身に付ける必要に迫られることがあります。とくに、不慣れな改まった場面や敬語が求められる場合です。そのような時、対訳や説明を大いに補うものとしてイラストがあります。こうした少し背伸びしなければならないシャドーイングの方法については、またの機会としましょう。

③ シャドーイング専用のテキストを
  リズムよく短時間、毎回の授業に取り入れていくために、一回分の練習量を見極めやすくシステマチックに構成された専用のテキストが複数出ています。シャドーイングの進め方に慣れてきたら、それを応用して総合テキストや聴解テキストなども活用するとよいでしょう。
  モデルになる音声は、教師が教室で肉声で読み上げるのではなく、ぜひCDなどのオーディオ機器を通した音声を使いましょう。その方が学生もシャドーイングに集中し、教師も学生の出来がしっかりチェックできます。


シャドーイングの方法
AJALT『1日10分のシャドーイング!就活と仕事のにほんご会話』アスク出版より


導入開始にあたってまず大切なこと
① 教師がポジティブな気持ちで臨む
  教師が新たな取り組みに臨む姿勢は、学習者の取り組みにも大きく影響します。まずは、教師自身がシャドーイングのポイントを把握し、学習者にその特長を明るく前向きに紹介してから始めることがその後の進行に良い効果を発揮するでしょう。

② 学習者の理解・納得
  次にシャドーイングの意義とポイントを学習者に明快に伝え、納得させた上で始めることが何より大切です。学習者はとかくすでに理解できているものを繰り返し取り上げると、「もうやったのに」「また?」と言いがちです。そこで、最初にシャドーイングの特長、何を目的としているかをしっかり理解・納得させておくことが、その後の進行に格段のやりやすさと効果を生むことになります。

③ 複数の教師で連携して実施する場合
  複数の教師で連携実施していく場合は、実施方法、進捗状況の連絡方法などをしっかり申し合わせ、共有していくことが必要となります。事前に立てた計画も柔軟に調整・変更しながら進めていくと、教師にとって負担感が少なく長続きするものとなるでしょう。

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