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日本語教育・再考(Web版)

技能実習生や働く外国人に対する日本語指導を考える〈その15〉
〜シャドーイングを取り入れる方法〜(2017年3月1日号掲載)

公益社団法人 国際日本語普及協会(AJALT)
所属講師 津田 訓江

 シャドーイングは、滑らかで自然な発話を促すトレーニングとして、取り入れる現場が徐々に増えているようです。その教材としては、学習者の日本語レベルより少し低めのものが効果的だという点は、前回141号に書きましたが、一方でプログラムの目的によっては、期限内に学習者の現在のレベルを上回る表現を身に付けなければならない場合があります。そうしたコースでのシャドーイング活用を考えてみましょう。

就職活動で、企業の現場で
 対象となるのは、初級の終盤から中級レベルだけでなく、上級レベルであっても苦手意識の強い適切なマナーを伴う改まった場面でしょう。
 日本における就職活動の流れに沿った各場面がそのひとつです。昨今、留学生枠を特別に設けず、日本人学生と同様に採用試験を行う企業も多いと聞きます。そうなると、まずはポイントとなる表現をできるだけ自然に話せるようにして、好印象を与える努力をしておくことが大切です。
 就職が叶った後も、企業の現場で業種にかかわらず改まった表現が求められる場面が待ち構えています。そこには、かなり汎用性のある定型的な表現が多く含まれているため、まずはそうした場面を知り、滑らかに言えるようクリアーしていけば、安心感が自信を生み、さらにステップアップへとつながっていくように思われます。

教材選びと工夫
 就職活動や仕事の場面にピッタリのシャドーイングテキストが出ていますが、それをコース内でどう取り上げるかは、学習者を見ながら一工夫が必要です。
 シャドーイングは毎回10分程度を継続して行うというリズムが大切です。そのため、コースの期間(回数)を考え、学習者の目的に叶う場面の取捨選択が必要になります。学習者がやり方に慣れて、自習が可能な環境であれば、取り組める場面も増やせるかもしれません。

進め方の手順
 第一のステップは、学習者に場面理解、発話の内容理解をしっかりさせることです。背伸びしたレベルの学習者にとっては初めての語彙、文法、表現が少なくないでしょう。そこで場面理解を対訳やイラスト(図6①)、マナー等の説明を大いに活用しながらCD音声を聴いて、しっかり且つスピーディーに進めます。
 第二のステップは、音声を聴きながら、会話スクリプトを目で追いつつ、自分も小声で0.2〜0.5秒後からシャドーイングします。この時のポイントは、スピードを意識し、遅れないようにすることです。
 第三のステップは、テキストを見ながら、普通の音量でシャドーイングします。この段階では抑揚や気を付けたい発音に注意を向けます。うまくいかない時は、教師がポーズを置くとよい位置(自然な区切り)までスクリプトを正しい抑揚でゆっくり発声して示し、続いて学習者も共に発声して、抑揚、発音の改善を促してもよいでしょう。(図6①の重点練習)
 第四のステップは、テキストを見ないで行うシャドーイングです。スクリプトを覚え切れていなくても、目をつむって行うと音に敏感になり、うまくシャドーイングできるようです。
 最後のステップは、学習者が言うべきパートの音声が無い状態で相手方の音声と会話します。もし、うまくいかなければ、一度テキストを見ながら行い、改めてテキスト無しでやってみます。この段階は、学習者にとって非常にチャレンジングなもので、一見大変そうに思えますが、実は学習者にとってかなり意欲的に取り組めるもののようです。
 以上は1回10分1場面全てを終えられるとは限りません。無理せず、費やす時間は10分なら10分と決めておき、サッと切り上げることです。続きは、宿題とするか、次回に引き継ぐか、方針を決めておけばよいと思います。このようにして毎回メリハリを持ってリズミカルに進めてみましょう。


シャドーイングの方法
AJALT『1日10分のシャドーイング!就活と仕事のにほんご会話』アスク出版より


 シリーズ「技能実習生や働く外国人に対する日本語指導を考える〜シャドーイングを取り入れる方法〜」は今回で終了致します。
 日本語を教える際に、ぜひシャドーイングを取り入れていただければと思います。お読みいただきましてありがとうございました。
 また、2013年から掲載してまいりました「日本語教育・再考」は本号が最終回となります。皆様の長年に亘るご支援に感謝申し上げます。

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