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日本語教師体験記

秦皇島市実験中学からの報告(2014/2/4)

2013年度中国派遣日本語教師 池嶋多津江

 秦皇島市は北京から高速鉄道で2時間の所に位置する中国の小都市です。万里の長城が海に入る東端にあたり、また中国政府高官の別荘地、北戴河があるところ、秦始皇帝が不老長寿の仙人を求めて滞在したところとしても有名です。それが市の名前に由来となっています。
 秦皇島市実験中学は中国には数少ない外国語学科のある公立高校です。英語学科・フランス語学科・ロシア語学科・韓国語学科・日本語学科があり、別名、<河北秦皇島外国語学校>と言います。この地域で1,2をあらそう進学校でもあります。日本語学科に今年から、高校卒業後、日本の大学に留学することを目指す<日本語国際クラス>が創設され、私は現在、その国際クラスで、<日本留学試験(EJU)>や<大学の授業に対応できる日本語>の習得を目標にして、文法・精読・会話・聴解・作文の指導をしています。国際クラスは一日4時間の日本語の授業があり、週20時間です。その他にも1年生と2年生の会話を週1時間ずつ担当しています。
 これまで、この学校では文法は中国人日本語教師が教えていたので、直説法で理解させることができるかどうか不安でしたが、さまざまな場面を想定して日本から200枚を超える絵カードを用意してきました。何とか、その絵カードで文法・語法・会話の指導を乗り切っています。
 中国の高校では進路指導というものがなく、生徒はひたすら、大学合格を目指して勉強するだけです。「私はなぜ日本の大学に留学するのか」という作文を書かせたとき、ほとんどの生徒が一行も書けなかったので、10月に入ってから、一人一人、面談をして、<日本の大学で何を学びたいのか>について時間をかけて話し合い、日本の大学に留学する意味を確認させました。その後、生徒と私との信頼関係・精神的なつながりが一気に深まったような気がします。私は日本の高校で長い間進路指導を担当してきましたが、ここ中国の地でそれが役に立つことになるとは思いも寄りませんでした。
苫小牧西高校との交流会
 11月18日(月)から20(水)まで姉妹校である北海道の苫小牧西高校から、小林憲雄校長以下教員、生徒3名、苫小牧市市議会議員ら6名が実験中学を訪れました。生徒の家を訪問したり、学校で交流会をしたり、とても有意義な時間を過ごすことができした。同世代の若者がこのように交流することで21世紀には日中間の友好関係が深まっていくと確信しました。国際クラスの生徒はそれぞれ、歌を歌ったり、ダンスを披露したり、自分で刺繍した携帯ストラップを贈ったり、自分の将来について語ったり、工夫を凝らして苫小牧西高校の学生たちと交流することができました。国際クラスの生徒たちは「将来は北海道大学で応用心理学を学びたい」とか、「経済を学んで投資銀行で働きたい」とか、「日本で会計学を学んで母のように会計士になりたい」とか、「自由な日本で文学を勉強して小説家になりたい」とか、はっきりと自分の将来について語り、私はスッカリ担任の気持ちになり、誇らしく思いました。
 翌日の授業では「国家レベルの交流も大切であるが、民間レベルの交流のほうが大切である。これで、もう21世紀に、お互いに銃を向け合うことはないだろう」という話をしました。「皆さんが真心をこめて贈り物を用意し、真心を尽くしてもてなしとしたことはお互いにとって心の財産になる」という話もしました。生徒たちは私の顔をしっかりと見て私の話に耳を傾けてくれました。日本語を「ことば」として教えるのではなく、日本語の背景にある「日本人の心や精神性」を伝えることが、私たちの最も大切な任務であるということを再確認することができました。
生徒たちに案内してもらった山海関での写真
 国際クラスの生徒たちとは毎日4時間、授業を通して時間を共有しています、この時期は彼らのアイデンティティーが確立していく時期なので<日本語教師>としてというよりも<高校教師>として日々奮闘しています。この生徒たちが日本の大学で希望通りの留学生生活を送ることができるように質の高い授業を目指したいと思っています。

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